真理の具現とは天職使命を知り、それを実行する事

真の宗教が有るか?『内外公論』15巻7月号、昭和11年7月1日

 一、真理の具現とは
 天地自然の運行、万象の流転と一切の生成化育の実相行姿其(その)ままであって、例へて言へば、人は人としての道を行じ、又、人は生れながら其(その)各々の天職使命があり、階級も儼(げん)として定ってゐるのであって、それを知り、それを実行する事が人としての真理の具現であり、それによって永遠の歓喜と栄を得、安心立命を得らるるのである。然るに今日はそれを教へ、夫を行ぜしむる力ある宗教がないから、人々は迷蒙に陥り、知らずしらず他の範囲を犯し、軌に外れ道を失ひ、其(その)極争や混乱を生むのである。之等は独り個人に限らず、社会も階級も国も世界も悉(ことごとく)それに漏れないといふ実状である。此(この)時に当って、宗教者なる者が天地の真理を弁へないから、人を教ゆる力もなく、感化する徳も無いのである。又之に就て、仏典もバイブルも、其(その)他の聖典も、実は真を説き、実を誨(おし)へて居ないのであるから、人として知る事が出来ないのも致方ないのである。何となれば、もし何れかの聖典に真実を説いてあったなら、今日の如き苦悩と混乱の時代は実現しなかった筈であるからである。又、真理が全具現されたならば、多数人が今日の如く病に罹り易く、天寿を全ふするものが暁の星の如く寥々(りょうりょう)たる筈がないのである。是等によって見ても、此(この)一箇条さへ現在の宗教中に有して居るものはないのである。